不登校改善を早くする秘訣はシンプルです。
例えば、何かの病気になったとき、
安静にする、食事に気をつける…など、最低限のことに気をつけておけば病気の治りが早くなりますよね?
それと同じように、不登校も親が最低限のことに気をつけておけば改善が早くなるものです。
※誤解のないように言っておきますが、不登校を病気だと言っているわけではありません。病気にたとえると説明がわかりやすくなりますので、ここでは病気にたとえて説明させていただきました。
病気と似ているのは、不登校の改善過程だけではありません。
不登校が改善した後も同じです。
病気が治ったあと、食事に気をつけたり適度に運動するなどして最低限のことに気をつけておけば、病気の再発リスクが小さくなりますよね?
それと同じように、不登校脱出後も最低限のことに気をつけておくことで不登校再発リスクが小さくなります。
この記事では、不登校対応で親が実行したほうがいい“最低限のこと”をお伝えします。
これからお伝えする内容をしっかりと意識し、実行していけば、お子さんの不登校改善が早くなるのはもちろん、学校に行くようになった後の不登校再発リスクも小さくなり、輝かしい未来に向かっていくことができます。
【本題に入る前に】
本題に入る前に、次のことを覚えておいてください。
「簡単なことがおろそかなのに、難しいことをしようとする親御さんが多い」
不登校の子供を持つ親御さんの多くが“自信過剰”になっています。自分の能力に合っていない難しいことをいきなりやろうとして失敗しています。
一般の傾聴技術を不登校対応で使おうとしたり、プロでも使いこなすことが難しい心理学を不登校対応に応用しようとしたり、不登校関連書籍を片っ端から読んでいったり……
いきなり難しいことに挑戦する親御さんがほとんどです。
基本がしっかりとできていればそういうことに挑戦してもいいのですが、そんな親御さんはいません。みなさん不登校対応に関して素人なのに、基本をやらずに「プロでも難しいこと」に挑戦しているのです。
基本的なことがおろそかなまま難しいことに挑む。それは、基本的なトレーニングを全くせずにフルマラソンに挑むようなものです。途中でリタイヤするのは火を見るよりも明らか。怪我をしたり体を壊したりするリスクも非常に高くなります。
フルマラソンであれば自分が苦しむだけなのでまだいいと思いますが、不登校対応は自分だけが苦しむわけではありません。親御さんが基本的なことをおろそかにして失敗してしまうと、お子さんまで苦しむことになります。
そんなことは誰も望んでいませんよね?
ですから、「難しいことをやる前に基本的なことができていますか?」と問いかけたくて「不登校対応で最低限やっておかなければならないこと」を書くことにしました。
これから1つずつ説明していきますので、ひとつひとつ、自分自身ができているかどうかに意識を向けながら読んでみてください。
これからお伝えすることのすべてがしっかりとできていれば、確実にお子さんの不登校改善はスピードアップします。
1.感謝
あなたは、今、子供が生きていることに感謝していますか?
子供が生きていることに感謝していますか?
子供が生きている、それだけでとてつもなく素晴らしいことですよね。これ以上ないくらい、ありがたいことです。
今生きていること以前に、子供が生まれてくれただけで感謝してもしきれないでしょう。
そのことを忘れていませんか?
誤解を恐れずに言えば、不登校なんて些細なことです。
もし、子供が明日死んでしまったら、
「学校に行くとか行かないとかどうでもよかったな……もっと子供と過ごす時間を楽しんでおけばよかったな……」
と後悔するでしょう。
まずは、子供が生まれてきたこと、そして今生きてくれていることに感謝する気持ちを思い出しましょう。その感謝の気持ちはふだん忘れていても心のどこかにあるはずです。それを思い出せばいいだけです。赤ちゃんの頃の写真や動画を見て、子供が生まれてきたあの日の感動を思い出すことも大切です。
そうした感謝のベースがなければ、どのような不登校対応をがんばっても無駄です。「感謝すべきことに感謝していない」という罰当たりなことをやっていたら、子供の状態が良くなるわけがありません。
これはスピリチュアルな話や宗教的な話ではなく、現実的なことです。
あなたが「今恵まれていることに感謝していない精神状態」であれば、それは不平不満です。不平不満を抱いている人は発言や行動に不平不満があらわれますから、その汚い言動で人が近寄ってこなくなり、協力が得られません。学校の先生や職場の上司がうまく協力してくれないことで不登校改善が阻まれているケースは山ほどありますが、そうしたケースにおちいる原因の1つとして前述の精神状態があるということです。
子供の不登校改善に成功する親御さんは、今恵まれていることに感謝する美しい精神状態を保っています。今恵まれていることに自然と感謝できる人だから、まわりの人たち(学校の先生・カウンセラー・親戚・友人知人・塾の先生など)が「もっと喜ばせてあげたい!」と思い、一生懸命力になってくれて、その素晴らしい協力のおかげで子供の状態がグングンよくなるのです。
もちろん、「この子が生まれてきてくれただけでありがたい、生きてくれているだけでありがたい」と思う気持ちは子供にも伝わります。その気持ちを感じ取った子供は「親からこんなふうに思われる自分は価値があるんだ」と感じやすく、無価値感が癒されやすくなり、そのうち自己肯定感を取り戻します(今ある自己肯定感を失いません)。
自己肯定感があれば、その自己肯定感のパワーで前に進み始めます。学校に行き始める、転校を決める、外出する、運動する、好きなことを始める……どのような前進になるかは子供によって異なりますが、必ず前に進み始めます。そうして確実に不登校脱出へと向かうのです。
まずは、「子供が生まれてきたこと」と「子供が今生きていること」に自然と感謝できる親になりましょう。
前述の“思い出す”だけでも十分なのですが、できれば一日に一度でもいいので、“独り言”で声に出して言ってみてください。
「○○(子供の名前)、生まれてきてくれてありがとう。あなたが今生きているだけで私は幸せだよ」
子供の前で言うのではありません。上記のような言葉を子供に伝えることを勧める不登校専門家もいますが、そのレベルの内容ではありません。今ここでお伝えしている不登校改善ノウハウはもっとレベルが高いものです。まわりに誰もいないときに“自分自身の独り言”として声に出すのが秘訣ですので、その点を誤解しないように気をつけてください。
この独り言を毎日言うようにしていると親御さんの気持ちのベースが感謝であふれ、その影響でお子さんの状態が良くなっていきます。お子さんが不登校脱出に向かい始めるとともに、不登校再発のリスクが小さくなっていきます。
2.受け入れる(受容)
あなたは、子供の存在をありのままに受け入れることができますか?
子供にはマイナスに見える面もあります。醜い心を持った面、未熟すぎて危なっかしい面、怠けて甘ったれな面…… そういったマイナス面まで含めて受け入れられますか?
今、「受け入れられる」と思った親御さんは、なぜ、子供の不登校で悩んでいるのでしょう?
ありのままを受け入れられるなら、子供が学校に行かない選択をすることも受け入れられるはずです。子供が家でゲームばかりしていても受け入れられるはずです。子供が昼夜逆転していても受け入れられるはずです。
それを受け入れられないのは、心のどこかに「こうあってほしい」と思う気持ちがあるからではないでしょうか? 「良くなってほしい」という望みが強いからではありませんか?
もちろん、子供がより良くなることを願うのは親として自然なことです。親が子供の幸せを願うのは自然なことですから……。
ただ、それは「より良く」であって「良く」とは違いますよね。
「良くなってほしい」と望んでいる親御さんは、その裏に「今は悪いけど」という思いがへばりついているはずです。
一方、「より良い状態」を願っている親御さんは、その裏に「今も良いけど」という思いがあるはずです。
つまり、「良くなってほしい」と思っている親御さんは心に否定のエネルギーが生じやすく、「より良い状態」を目指している親御さんは心に肯定のエネルギーが満ちていて、両者は一見すると似て見えますが中身は全く違うんですよね。
その違いがわかっていない親御さんは、現状を否定しながら「良くなってほしい」と願っています。そういう親御さんは現状を否定しているので、今の子供のありのままを受け入れることができません。そうして親御さんの力で子供の不登校を悪化させてしまっているのです。
どうしてそのような親御さんが子供の不登校を悪化させてしまうのか、ピンときているでしょうか?
そのメカニズムはシンプルです。親が子供を否定していると、「子供の現状を否定する親の気持ち」と「良くなってほしいと思う親の期待」がダブルで子供に伝わり、それが子供への大きなプレッシャーとなるためです。
親からのプレッシャーが強ければ、子供はそのプレッシャーに反発するのが精一杯で、その反発にエネルギーを使い果たしてしまいます。エネルギーがないと学校に行けません。転校や進学のためのパワーも不足します。そうして力が足りなくて不登校を抜け出せないままになるので、不登校が悪化・長期化する一方なのです。
子供の状態を良くすることができる親御さんは「良くなってほしい」と思う気持ちに傾いていません。前述のように“感謝”し、今の子供のありのままを受け入れ、「今のままでも十分」と思いながらも“より良い未来”に向けて親としてできることを行なっています。だから余計なプレッシャーがなく子供の力になることができ、子供は着実に不登校を脱け出すほうに向かっていくのです。
これは深い話なので、何度も読み直してください。「不登校のままでいい」と言っているのではありません。「不登校のままでもいい」と思えるくらい中立の感情になったときに子供へのプレッシャーがやわらぎ、親が子供の力になれて不登校脱出に向かうこと。その事実をお伝えしています。誤解しやすい内容ですので注意深く読み直すことをお勧めします。
3.笑顔
以前、対面で不登校相談を行なっていたとき、「怖い顔」や「暗い顔」をして相談にみえる親御さんがたくさんいらっしゃいました。そういう顔をみていると「こんな顔の人が家の中にいたら家族全員が落ちこむだろうなぁ」と思いました。
「怖い顔」や「暗い顔」をするのはラクです。筋肉を使わなくていいですからね(笑)
ただ、そのラクなほうに流されていたら「ラクではない未来」が待っているでしょう。
ダイエットでも筋トレでも、ちょっと無理するからこそ結果が出ますよね?
それと同じです。
親御さんがちょっとだけ無理をして「笑顔」をキープする訓練をするだけでも、お子さんの不登校が改善しやすくなります。
(もちろん、作り笑いをしましょう!ということではありません。最初のうちは多少無理をしてでも笑顔を心がけてそのうち自然な笑顔を保てるようになりましょう、ということです)
あなたは、素敵な笑顔で過ごしていますか?
不登校の子供の多くは、親の「怖い顔」や「暗い顔」を見て自分(子供)のせいだと感じます。
「自分が学校に行かないせいで親がイライラしているんだ…… 落ちこんでいるんだ…… 親をこんな目にあわせる自分はなんてダメな人間なんだろう…… こんなダメな自分は価値が低い……」
そう感じます。意識または無意識で。
そうして子供自身のセルフイメージが下がり、ただでさえ不登校で自信喪失しているところに追いうちをかけるように自信喪失が加わります。その自信喪失の重なりで自信をすっかり失い、意気消沈し、学校に行く想像すらできなくなる…… これが典型的な不登校悪化です。
もちろん、親が「怖い顔」や「暗い顔」をしていると、子供が親に話しかけづらくなるデメリットも生じます。
親に話しかけづらい→子供が話さない→親は子供の話を聴けない→話を聴けないと子供の気持ちが分からない→気持ちが分からないからどうサポートしていいか分からない→的確なサポートができない→不登校悪化
こうして不登校悪化に至ります。
ですから、そうして不登校悪化に至らないように親御さんが笑顔でいることが大切なのです。
ときどき鏡を見てみましょう!
あなたの表情は、あなたが思っている以上にかたいかもしれません(・_・;)
今日はいい笑顔でも、明日は怖い顔をしているかもしれません(・_・;)
定期的に確認することが必要です。
4.話を聴く
あなたは子供の話をどれくらい聴いていますか?
どれくらい深く聴けていますか?
元不登校の方達の話を聴くと、多くの方たちが
「不登校だった頃に苦しかったのは親に話を聴いてもらえないことだった」
と語ります。
「私は子供の話をよく聴いているほうだと思う」と思っている親御さんも気をつけてください。親は子供の話をよく聴いているつもりなのに、子供は「ぜんぜん話を聴いてもらえない」と感じている…… そういうケースが非常に多いのです。(本当に多いです)
どうして、そのような食い違いが起きるのでしょうか?
その原因は、
「子供が『これから本題を話そう』と思っているときに少し黙ると、決まって親が話し始めること」
にあります。
人は大事なことを話そうとするときに慎重になるものです。自分にとって大事なことを打ち明けようとすると慎重になって、しっかりと考えて言葉を選びたくなります。当然、そこには沈黙が訪れます。ちゃんと話したいと思うからこそ、黙って頭のなかでまとめる時間が必要なのです。
それなのに、ほとんどの親御さんは子供との会話で沈黙が訪れると話し始めてしまいます。それで本題を切り出せなくなった子供は、話すのをあきらめ、終了。そうして“あきらめ”が積み重なることで子供は無口になっていきます。
当然ですよね。本当に話したいことを話せない欲求不満が蓄積されていくのですから……。
親と会話するたびにフラストレーションがたまっていけば、親と話したくなくなるのは当たり前です。
もう一度、質問します。
あなたは子供の話をどれくらい聴いていますか?
どれくらい深く聴けていますか?
「深くまで聴けていないかも……」と少しでも思ったら、まずは沈黙を尊重するところから始めるといいでしょう。それだけでも親子の会話が変わってきて、子供が大事な話をするようになり、不登校改善に向けて大きく動き出します。
5.質問する
不登校対応では「質問して子供自身に決めさせること」が重要です。
理由は2つ。
a.強制されがちだった記憶を払拭するため
b.子供の自発性を強化するため
まず、aから説明しましょう。
不登校の子供と親の関係は、不登校になった直後に「強制」で崩壊しているケースが大半です。
<例>
子供が学校に行かなくなったことに驚いた親が、ショックを受け、不安に飲みこまれ、混乱し、子供の気持ちをろくに聴こうともせず無理やり学校に行かせようとしてしまう(=強制)
↓
そこで自分の気持ちを分かってもらえなかった子供は「強制」への嫌悪感を強め、親を信用できなくなり、心を閉ざす
このような形で崩壊しているので、その崩壊の記憶があるうちは正常なコミュニケーションがとれません。(上記はあくまでも一例です。他にもいろんな形で親子関係が崩壊しています)
先ほどの例のように「強制」への嫌悪感が強まった状態で親が子供に何か言えば、反射的に子供は「また強制される!!」と感じてしまいます。そのため、親が何か言えば言うほど親子関係が悪くなり、衝突が絶えず、しまいには子供が心を閉ざして部屋にひきこもってしまうのです。
ですから、何か言う前に「質問」が大事。まずは質問で子供との距離を縮めていく必要があるんですね。
質問の形なら、強制のイメージがやわらぎます。
「あなたはどうしたいの?」「あなたはどう考えているの?」などと質問されて「強制された!」と感じる人はなかなかいませんよね。(もちろん、話し方や顔の表情にもよりますが)
そうして強制のイメージをやわらげてコミュニケーションをとることができるので、親が子供に質問すること(質問で子供に決めさせること)が重要なのです。
質問は強制されがちだった記憶を払拭することに役立ち、良好な親子関係を取り戻すことにつながります。それが不登校改善につながることは言うまでもありません。
bについても説明しましょう。
親が子供に質問すると、その質問について子供は必ず考えます。「わからない!」と即答で返ってきても、必ず一瞬は自分の頭で考えています。(その場では考えなくても、あとになって思い返して考えることはよくあることです)
その「自分の頭で考える」という経験が積み重なることで自発性が強化されます。
もし、これが質問ではなく、親から子供に向けて何か言う形だったらどうなるでしょう?
aの説明でお伝えしたとおり、子供は反射的に「また強制される」と感じてしまいます。それで衝突が増え、親子関係が悪化。質問の場合とはまったく違いますよね。
親から子供に何かアドバイスできるようになるのは、もっと後のプロセスです。焦らずに、まずは「質問」で親子間の距離を縮めていきましょう。
6.鬼の言葉を使わない
「笑顔」に関するお話でもお伝えしたとおり、不登校の子供を持つ親御さんの多くが「怖い顔」や「暗い顔」をしています。
どうしてそういう顔になるのか? その原因はふだんの心がけにもよりますが、もう一つ、日頃どんな言葉を発しているかも関係します。
「担任が何もしてくれない」
「新しい先生は気がきかない。前の先生のほうが良かった」
「子供が不登校になってから私の体調が悪くなった」
「もう死んでしまいたい」
「子供の将来が心配で眠れない」
……こんなふうにネガティブな言葉を口に出していませんか?
何を言うかは個人の自由ですが、そんなことばかり言っていたら「怖い顔」や「暗い顔」になるでしょう。
人間の脳はよくできているもので、一つ何かを発言するとその発言を強化していきます。
<例>
「担任が何もしてくれない」と発言
↓
脳が「担任が何もしてくれない人であること」を証明しようと勝手に動き出す
↓
そう言えばこんなこともしてくれない、あんなこともしてくれない……とエンドレスで「担任=何もしてくれない」を強化していく
↓
担任に対する不満がふくれあがり、嫌な気分が増す
↓
その嫌な気分が表情にあらわれる(「怖い顔」や「暗い顔」)
こうして脳の“便利な機能”のおかげで、あっという間に身体全体を悪化させていくのです。
当然、その影響は子供にまで及びます。子供は親の「怖い顔」「暗い顔」を見て話しかけづらくなり、「また批判されるかも」「またうるさいこと言われるかも」と思いこむようになり、しまいには何も話さなくなります。
子供が無口になってしまうと、親は子供の気持ちが分からないのでどうサポートしていいか分かりません。どうサポートしていいか分からないから有効なサポートができず、子供の不登校が悪化。そうして不登校が悪化していくのです。
親の表情や雰囲気を“鬼”にしてしまうような言葉は、できるだけ口に出さないようにしましょう。
以上、子供が不登校になったときに最低限しておかなければならないことを6つお伝えしました。
1.感謝
2.受け入れる(受容)
3.笑顔
4.話を聴く
5.質問する
6.鬼の言葉を使わない
この6つを意識して改善するだけでも、子供の状態はグングン良くなっていきます。
不登校改善は親が対応を間違えなければスムーズですから、希望を持って取り組みましょう!
執筆者:シア・プロジェクト代表 木村優一
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