不登校の子供を持つ親御さんがよくやってしまう対応失敗の1つが、
「質問に答えすぎてしまう」
というミスです。
子供から質問されたことになんでも答えてしまい、子供が自分の力で立ち上がる力を奪ってしまっているケースが多いのです。
例えば、
子供:「お母さん、こういう時、どうしたらいい?」
という質問。
そう聞かれて、つい答えてしまうお母さんは多いでしょう。
お母さんによっては、「子供を自分(親)が理想だと考える方向に動かすチャンス!」と心のどこかで意識して、興奮気味に“自分の考え”を語ってしまうかもしれません。
そんなことを続けていたら、子供はどうなるでしょうか?
「こういう時、どうしたらいいのか?」という疑問は、本来、子供本人が考えるべきことです。誰か自分以外の人に考えてもらうことではありません。そういった疑問を自問し、思考を深めたり広げたりすることで子供は成長していくものです。
正解は1つではないし、簡単には答えが出ない……そんな疑問だからこそ自分で考えることが大事で、自問自答によって自力が養われ、不登校を抜け出す力がついてくるんですよね。
だからこそ、不登校対応では語ることよりも聴くことが大事。親が自分の考えを語るのではなく、子供の考えをうまく聴くのがポイントなんですよ。
そこのところ、本当に理解できているでしょうか?
極端な対応になっていませんか?
こんな話をすると、思考が偏りがちな親御さんは極端な対応になります。
例えば、子供がこんな質問をしてきた時。
子供:「お母さん、この先どうすればいいのかなぁ? これだけ欠席して勉強も遅れてるから、普通に大学に行くのは無理なのかなぁ?」
こういう質問をされた時、
「そうだ、そうだ、こういう時、子供自身で考えさせることが大事なんだ」
と短絡的に考えて、何も答えないのです。
そういう親御さんは、極端な対応にならないように気をつけましょう。
子供自身で考えることが大事ですが、だからと言って“情報”を教えてあげることは悪いことではありません。例えば、こんなふうに“情報”を提供したら、子供の心にどんな変化が起きるでしょうか?
母親:「欠席日数が多くて勉強も遅れている状態から普通に大学に行った人のこと、お母さん、知ってるよ」
こんなふうに言われたら、子供の思考が広がるかもしれません。
そして、こんなことを聞いてくるかもしれません。
子供:「でも、それって誰も知らないような無名の大学でしょ?さすがに誰でも知っているような有名大学に通ったわけじゃないでしょ?」
この質問が出てきたら、親としては子供の思考を深く知る手がかりをつかめます。もしかしたらこの子は有名大学に行くことにこだわっているのかもしれない……と。
そうして推測を働かせ、こんな情報を追加したらどうでしょう?
母親:「お母さんが知っている人で、高校中退して高卒認定とって早稲田に合格した人がいるよ。なんか、勉強法を大幅に変えてうまくいったみたいだけど」
子供は「その勉強法ってどんなやつ?」と聞いてきて、その勉強法を知ることで猛烈に勉強を始めるかもしれません。
何が起爆剤になるかわからないところも、不登校対応の面白いところです。
「事実性」に目を向ける
何を答えて何を答えないほうがいいか。
その判断の目安となるのは「事実性」です。
誰が答えても変わらない事実なら、情報を回答として出してあげる。
そうではなく答えが無数にあって本人が決めたことが正解となるものは、答えない。
そんなふうに考えれば、判断しやすいのではないでしょうか。
そういう意味で、親ができる限り幅広く情報を頭に入れておくことは重要です。特に、不登校改善事例を豊富に知っていれば知っているほど、不登校対応ではアドバンテージになるでしょう。
ちょっと奥深いのは、情報に親の主観を混ぜると逆効果になる点です。
例えば、前述の例で、親の心が「無名でも有名でもとにかく普通に大学に進学するのがベスト!」と偏った気持ちになっていたらどうでしょうか?
その場合、情報に主観を混ぜて伝えてしまうかもしれません。
「普通に大学、行けるよ!欠席日数が多くて勉強も遅れている状態から大学に行った人のこと、お母さん、知ってるよ!大学行きたいの!?」
直接何か言うわけじゃなくても、気持ちが「大学進学=ベスト」に傾いているので、その気持ちが表れた顔や声でコミュニケーションをとってしまうのです。
すると子供の心は「やっぱり大学進学がベストだよなぁ」と傾いてしまうかもしれません。“自分の正解”を見出す生き方ではなくて、“親の正解”に染まる生き方にとどまるのです。
その結果、半自動的に「今の自分じゃ大学進学なんて無理だ!」という気持ちが生じ、再び現実逃避する形にとどまる可能性が高まります。
そうして逆に不登校長期化に向かってしまうのです。(=逆効果)
だからこそ、主観と客観を切り分ける意識が必要で、その思考のもとに客観的な“事実”だけを情報として答えるコミュニケーションの取り方が効果的なんですね。
なぜ、30代に入ってから「不登校に似た状態」が再発するのか?
自分で答えを出す機会を奪われたまま半ば無理やり一時的に不登校脱出した子供は、いつになるかはわかりませんが「話が違う!」と荒れ狂う時がきます。
例えば、親が「大学進学がベスト」と考えていて、それに染まるように子供が大学進学を目指し、不登校を抜け出し、実際に大学進学した場合。一時的には万々歳だと思いますが、その幸せは長く続きません。
「自分で決めたことが自分の人生に関する正解になるんだ……」と気づくまで成長した時に、“親の正解”を生きてきた自分に絶望するのです。
そして、
「話が違う!お父さんお母さんは大学進学がベストだって言ってたじゃないか!でも、自分の人生に大学進学は必要じゃなかった!もっと自分の才能を輝かせることを10代でしていたかった!ふざけるな!!」
なんてアホみたいなことを言い出し、結構な年齢になっているのに会社を辞め“自分探し”を始めたりします。
結局、不登校に似た状態が再発するだけ。
問題の根本は何も解決していなかった……ということになるのです。
当たり前のことですが、学校のテストと違って人生の正解は1つではありません。人生におけるいろんなことが複数の正解で成り立っていて、そのうちどれを選ぶことが正解になるかは人によって違ってきます。(というより、自分で選んだものが正解となります)
それなのに、多くの親御さんが子供の質問になんでも答えてしまう……
それで“親の正解”に誘導してしまい、根本からの不登校改善にならなくなっている……
そうして不登校問題は解決が困難になっているのです。
この状況の厄介なところは、子供の意識にもあります。
子供も子供で「考える難しさを避けたい意識」があって“親の正解”に染まるのがラクだと感じている側面もありますから、余計に解決が困難なのです。
要は、不登校問題は親子共同で悪化させやすい状況にある、ということですね。
根本からの不登校解決を目指すなら、親の主観を離れ、事実として教えられる情報だけ教え、子供が自分で“正解”を出すことを促すサポートのしかたをしましょう。
執筆者:シア・プロジェクト代表 木村優一
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