不登校の原因は大きく2つに分けて考えることが大切です。
1つは、不登校開始のきっかけとなる原因。
もう1つは、長年かけて積み重なってきた不登校背景要因。
この2つに分けて考えることが重要です。
例えば、学校の先生との間で何かトラブルが起きて子供が不登校になった場合。
その場合、きっかけとなった原因は先生との間で起きたトラブルですよね。
そこで多くの親御さんはその“きっかけ”に過ぎない原因を解決しようとするのですが、それではうまくいきません。
仮にそれでうまくいって子供が登校するようになったとしても、それは一時的なものでしょう。“きっかけ”とは別の「長年かけて積み重なってきた不登校背景要因」が解決していないので、しばらくして不登校が再発するだけなのです。
きっかけとなった原因に目を向けて解決をはかるのは悪いことではありませんが、それだけで済むと誤解しないように気をつけましょう。
重要なのは、長年かけて積み重なってきた不登校背景要因の改善のほうです。
「長年かけて積み重なってきた不登校背景要因は何か?」と考えて、そこで思い当たる問題の解決に取り組むことをお勧めします。
威圧的な子育てが不登校背景要因になるケース
長年かけて積み重なってきた不登校背景要因には、いったいどんなものがあるのでしょうか?
その代表例が、威圧的な子育てです。
父親または母親のどちらかが子供を無理やり抑えつけるようにして育て、その積み重なりが不登校背景要因になることがあるのです(※)。
※「父親または母親のどちらかが」と書きましたが、父親代わりの人・母親代わりの人も含みます。両親以外の祖父母などが該当するケースもありますので、そのあたりは柔軟に解釈してお読みください。
具体的にどんなケースがどのようにして不登校背景要因になるのか、説明しましょう。
よくあるケースは、絶対的な存在として厳しい父親が家庭を支配しているケースです。
母親も子供達も父親に気を使っていて、遠慮していて、言いたいことがあまり言えない…… 父親が決めたことは絶対!に近く、誰も逆らえないような空気…… そういう家庭では子供が萎縮してしまい、自分の感情がわからなくなってしまいます。
自分の感情がわからない、父親が自分(子供)のことを決めてしまう、そんな状態で育ってきた子供は、ある時、その抑圧に耐えきれなくなります。まるで動かされている機械のように父親の言うとおりに生きている自分が悲鳴をあげて、爆発するのです。
その爆発は、無難な形ではできません。
今まで抑圧され、自分自身の感情がわからないまま生きてきたのですから、自分自身をどう解放していいかもよくわからないんですね。
それで「不登校」という形で爆発!!
「父親の言うとおりに生きてきたけど、ぜんぜんうまくいかないじゃないか!!もう、まっぴらだ!!でも、何をどうしていいかわからないから、とりあえず学校に行くのはやめる!!もう疲れた、何も考えずにいたい、何もしたくない……」
そんな気持ちを不登校という行為で示すわけです(※)。
※この“爆発”は思春期に起きやすくなります。体も心もある程度発達してきて、爆発できる基盤が整ってくるためです。
もちろん、このケースの“父親”の部分が“母親”のこともあります。
どちらにしても、長年積み重なったものが不登校背景要因になっているのです。
親が変わることの重要性
信じられないかもしれませんが、前述のような危機的なケースでも親が全く変わらないことがほとんどです。
親はまさか自分自身に原因があるなんて思っていないので、不登校を「子供の問題」として解決をはかるのです。
それで不登校開始のきっかけとなった原因ばかりに目を向け、そちらばかりを解決しようとし、表面的な改善になってしまう……
そうして“解決にならない解決”を頑張っているのです。(不登校の子供を持つ親御さんの大半は!)
ここまで読んできた読者の皆様はよくわかったと思いますが、親が変わらなければ根本的な不登校改善にはなりません。
一時的に子供が登校できるようになったとしても、父親または母親が威圧的な子育てをやめなければまた不登校背景要因が積み重なり、いつか不登校(または引きこもり・ニート・うつなど)が再発するだけです。
それでも、自分自身(親)を変えようとは思いませんか?
それでも、子供を変えようとし続けますか?
私は週に一度の電話相談を行なっていた頃、一種のパフォーマンスとして親御さんを叱ったことがあります。
威圧的な子育てをしてしまっている親御さんは少し話しただけでわかるので、そういう親御さんには「逆の立場」を体験していただきたいと思い、私があえて威圧的な態度で叱ることがあったのです。(もちろん、そういうふうにしても大丈夫そうな親御さんに対してだけですが)
そこで目が覚める親御さんは、「今まで子供をこんな気持ちにさせていたんだ……」と気づきます。
その“目覚め”さえ起きれば、あとは早いです。その親御さんの変化がきっかけで劇的に家庭全体が幸せになり、子供が学校に行くようになるのはもちろん、夫婦関係まで愛に満ちたものになってきます。
親が良い意味で自分自身を“壊す”勇気を持てば、子供はガラリと変わります。不登校から脱出できるのはもちろん、うつが治ったりアトピーが治ったりすることもあるくらいです。
※ちなみに今は電話相談は受け付けていませんし、厳しく叱るようなサポートのしかたもしていません。そんなサポートのしかたよりももっと優しくて、もっと楽しくて、それでいて電話相談とは比較にならないほど効果的なサポート「ひふみ~よ 」を行なっています。
絶妙な傾聴が不登校脱出に向かわせる
「威圧的な子育てをしてきてしまったかも……」と思う親御さんは、子供が感情を吐き出した時に喜んでください。
例えば、次のような言葉を子供が言うことがありますよね。
「お前ら(両親)が悪いんだよ!!死ね!!」
「なんで俺(私)を生んだんだよ!!こんな人生なら生まれてこなかったほうがマシだった!!」
「もう、何もかもどうでもよくなったんだよ!!人生終わり。それでいいんだよ!!」
こんなふうに気持ちを言葉にして表し始めた時、それを喜ぶ余裕を持ちましょう。
突然子供が感情的になると驚くかもしれませんが、それは凍りついた本音が溶けて表に出始める喜ばしいプロセスなのです。
たとえ罵倒されても、気が狂ったように見えても、残酷なことを言われても、それに振りまわされないこと。子供が吐き出す感情をそのまま受け止めて、やがて見えてくる本音が表れるまで聴きましょう。
聴く際のポイントを1つ。
子供が吐き出す感情の中には混乱が生み出したものも含まれています。特に、感情を言葉にし始めた当初というのは自分でも自分の気持ちがよくわからずに言葉にしていますから、“偽物”に近いくらいの感情だったりします。
ですから、子供の言葉を真に受けないことも大事で、でもありのままに受け入れることも大事で、絶妙な傾聴が求められます。
その傾聴を続けていけば、やがて子供の混乱がおさまり、気持ちがクリアになってきて最終的には“本音”が見えてくるでしょう。その本音が言葉として表れた時、親子関係がガラリと変わります。
親御さんによっては子供の本音を初めて知ったことに心動かされ、心から反省し、自然と涙がこぼれるかもしれません。その様子を見た子供も心を動かされ、涙を流すかもしれません。
全く見えなかった本音を子供が表した時、親も子も劇的に変化し、その劇的な変化で根っこからの不登校脱出に向かい始めるのです。
1つ覚えておいていただきたいことは、子供は親が思う以上に寛容である点です。
親がとんでもなくひどい子育てを10年以上続けてきて、それが原因で青春を奪われてしまったとしても、それを水に流して許す愛情があります。すぐには許せないかもしれませんが、いつかはスッキリと許してくれるものです。
だから安心して反省してください。
今からでも遅くありません。
「子供にひどいことしてきたな」と素直に認め、子供との接し方を変えれば、明るい未来が待っていますよ。
執筆者:シア・プロジェクト代表 木村優一
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