通常、不登校の子供を持つ親御さんの大半(特に子供が不登校初期の親御さん)は親の考えを子供に伝えようとしてしまいます。
なかには、子供を親の望む方向に動かそうと助言する親御さんもいます。
そうして不登校対応した結果、子供の状態は悪化に向かうばかり……
そんなケースが“普通”と言っていいほど、大半の親御さんは対応を間違っています。
それは、ある意味しかたありません。「不登校の子供を持つ親」になるのはほとんどの方が“初体験”で、あまりにも知識と経験が不足しているために何をどうしていいかよくわからないのですから。
対応を間違えてしまった親御さんは、自分自身を責め過ぎないように気をつけてくださいね。あなたは“初体験”で何も分からない中、よくやってきたのです。
「親の考えを伝えようとする不登校対応」や「親の望む方向に子供を動かそうとする不登校対応」でとことん子供の状態を悪化させてしまった親御さんは、ある時、直感的に気づいたでしょう。
「今のやり方では状況が悪化する一方だ……」
と。
まだ気づいていない親御さんは、これから気づきます。
「今のやり方では状況が悪化する一方だ……」
と。
そう気づいた時、自分自身のひらめき(または新たな情報収集)で「聞くことの重要性」を悟るものです。子供の話を聞くアプローチに変えれば、子供の状態が良くなり始めることに気づくんですね。
※「聞く」ではなく「聴く」が適切な表現ですが、ここでは一般の方に合わせて「聞く」と表現させていただきます。
そうして子供の話をよく聞こうとするのですが……
その道は予想以上に困難でしょう。
・それまでの間違った不登校対応で親子間の信頼関係が崩壊していて話を聞こうとしてもあまり話してくれない
・ちゃんと聞こうと思っているのに、ついつい子供の話を途中でさえぎって自分(親)の話を語ってしまう
・そもそも無口な子供なので会話が続かない(※)
※このケースの大半は、親の勝手な思い込みです。本当は無口でもなんでもないのに、親が勝手に「この子は無口だ」と思い込み、その思い込みに応えるようにしゃべらないだけなのです。実際、私も親から無口だと思われていましたが、生まれてはじめて彼女ができた瞬間から彼女にはペラペラとしゃべるようになり、 親から驚かれました。無口な子供の大半は、無口にさせる親のもとで生活しているだけなのです。
こうして次々と壁が立ちはだかります。そこで挫折して、いつの間にか「間違った不登校対応」に戻ってしまうケースがほとんどです。
スキルは一日では身につきません。継続的にトレーニングを続けてはじめて身につくものです。試行錯誤しながらも継続して傾聴スキルを磨き続けましょう。
子供の話を聞くスキルを磨いていくと、ある時、こんな話が聞けるかもしれません。
「俺が◯◯先生の悪口言ってたってチクられて、それから俺は◯◯先生の目の敵にされたんだ。そんなんで学校に行けるわけないだろ。俺が不登校になったのは俺自身の弱さにもあるかもしれないけど、半分は◯◯先生やチクった奴のせいだよ」
例えばですが、上記のような話が聞けたとします。
そうしたら、あなたはどう思いますか?
「こんな思いを抱えて誰にも言えずに苦しんできたんだね……。かわいそうに……。それで私たち親からは『とにかく学校に行け』と責められて、本当にキツかったよね。本当に悪いことをしてしまった。ごめんね」
と思うでしょうか?
それとも、怒りがわいてきて学校に抗議するでしょうか?
どちらにしても、あなたは肝心なところを見落としている可能性が高いでしょう。
傾聴スキルが高い人は、まず、こんなことを考えます。
「この子はこう思っているんだ。この思いは事実だけど、実際にこの子が言うとおりの事実が起きたかどうかはわからない」
そう考えた上で、事実としてはっきりしている“子供の思い”だけに共感するのです。
私が今お伝えしていることの意味、伝わっているでしょうか?
ポイントをシンプルにお伝えしましょう。
子供が◯◯先生の悪口を言ってたことをチクられたこと
→事実かどうかわからない (子供がそう言っているだけなので)
子供が◯◯先生の目の敵にされたこと
→事実かどうかわからない (子供がそう言っているだけなので)
子供が「俺は◯◯先生の目の敵にされた」と思っていること
→事実
子供が「そんなんで学校に行けるわけない」と思っていること
→事実
子供が「俺が不登校になったのは俺自身の弱さにもあるかもしれない」と思っていること
→事実
子供が「俺が不登校になったのは半分は◯◯先生やチクった奴のせいだ」と思っていること
→事実
このように“子供の思い”は事実だけれども、“子供がこうだったと言っていること”が事実とは限らないんですよね。(言っているだけですから)
そうして「事実」と「事実かどうか定かでない部分」を切り分けて、事実のほうだけに共感しながら聞くのが不登校解決につながる傾聴なのです。
これができなければ偏った思考になり、偏った見方で学校側とコミュニケーションをとることになり、最悪の場合、学校側が不登校サポートに協力してくれなくなることもあります。
このように「子供の話を聞く」というシンプルな行為の中には奥深いテクニックが詰まっていますから、安易に考えないように気をつけましょう。
執筆者:シア・プロジェクト代表 木村優一
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